Story 1 〜出会い頭の猛”ふぶき”〜
ここは、ジョウト地方エンジュシティ。
古い建物が立ち並ぶ、ジョウト有数の古都だ。
そんな街中の片隅に、一軒のアパートがあった。
外見は古いが、極端にそうではなく、それなりに住み心地はよさそうな所だ。
古い建造物が続いているからだろうか、しっくりと馴染み、違和感を感じさせない。
そこに、一人の男が小さな女の子を連れ、向かっていた。
大体60歳位だが、身長はすらりと高い。ちょっと顔は強面だ。
女の子は、というと、美しい水色の髪をポニーテールに纏めている。
大きな瞳は赤く、肌は白い。
「どこいくの?」
女の子が、おずおずと言い出した。
「これから、お前さんが一緒に暮らす家族の元に行くんじゃ。なぁに、悪いやつじゃあない。
ちぃとばかり口は悪いが、良い奴じゃ。それに、今は遠縁のイトコ達も来ておるしの」
老人は、カカカと笑うと、アパートの階段を登り始めた。
そして、『龍野』と書かれた表札のあるドアの前で止まった。手が伸びて、戸を打つ。
「帝!ちぃと話がある!開けてくれんかの」
少し経って、戸が開き、そこにいたのは、縁の無いメガネをかけた若い女だった。
「あら・・・永久先生。兄さんだったら今出かけてますけど・・・。どうぞ」
永久は女の子を連れて、部屋の中に入った。
玄関から最初に見えるのは、大きく引き伸ばされた風景写真。
そこを曲がると、奥へと細く伸びる通路がある。
その手前にあるドアを通って、リビングに入った。
「もうすぐ帰って来ると思います。・・先生、その子どうしたんですか?」
さっきの女が茶を出し、疑問を投げかけた。
「ちょっとの。風ちゃん、太陽もいないのかね?」
「ええ。大会が近いとかで、今特訓中なんです」
風はそういって立ち去った。数分後、どたばたと足音が聞こえて・・・
「お!永久先生じゃん!お久しぶりっす!」
髪の毛がつんつんした、金髪で外側だけ黒の少年がやってきた。
「今日はどしたんすか?帝兄に用事いてっ!何すんだよ、風!」
「少しは静かにすれば?太陽。あんた、私と同い年とは思えないわよ」
後ろから思いっきり叩かれたらしい。
さっくりといわれた太陽は、ぐうの音も出ないほど黙ってしまった。
「そうだ、兄さんは少ししたら戻ってくるそうです」
それだけ告げ、太陽の首根っこをつかんでずるずると引きずって行った。
「あのお姉ちゃん達、だあれ?」
「お姉さんが、風ちゃんで、さっき叩かれたほうが、太陽。帝のイトコじゃよ」
数分後。ガチャリと戸が開いて、ジャージ姿で二枚目な青年がやってきた。
「よ、爺さん。俺に用があるらしいな」
「そうじゃ、帝」
帝は他のソファに身を沈めた。
「お前さんに、この子を引き取ってほしいんじゃ」
「へぇ、俺にそのガキを・・・・・・・・・・・・・・はぁ!?」
普段あまり大きく開くことの無い切れ長の瞳が、まん丸になった。
「どういうことだよ!つまり、俺の娘にしろってことか?」
永久が、頷いた。
「冗談じゃねぇ。爺さん、それはねぇだろ」
「嘘を言うと思うかね。この子は莉沙。風ちゃんや太陽と同じ種族じゃよ」
「ってぇと・・・・フリーザー族、ってトコか」
「そうじゃ。嫌ならかまわん。この子が使い得る最大の大技、ふぶきが出るだけじゃ」
「俺はカイリューだぜ?氷に弱いの解ってて言ってんのか?」
再び頷く。あきれ返った帝は・・・・・。
「わーったよ。引きとりゃいいんだろ。おい、莉沙・・・だったか。お前、此処で暮らすか」
「・・・・・・・・・・・・うん」
怯えたように、莉沙が頷いた。
こうして、この生活は始まった。
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帝はこんな人なんです。
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