Story 4 〜お嬢と幼女〜

「あれ?」 コガネシティの片隅にある、私立・ポケモン学院高等部。 そのまた片隅にある3年A組から、変な声が聞こえた。 「どしたの、風」 金髪の少女が声をかけた。どうやらピカチュウ族らしい。 「弁当忘れてきちゃったみたい」 「はぁ?」 確かに真面目で評判の良い風だが、どこかこうやって抜けているのである。 「どうしよう・・・」 その頃。 ちょっと人気の少ないところに、一人の女の子がいた。 「ふぇ・・・」 ぐすん、とすすってきょろきょろと辺りを見渡した。 莉沙だ。 ついさっき、コガネに用事のある帝と一緒に風の弁当を届けに来たのだ。 何故帝がいないのか、と言えば・・・ 『中に入れば、誰かいんだろ。そいつに訊け』 というなんともアバウトな理由で、帝は用事を済ませに行ってしまったのだ。 臆病な莉沙の事、誰も知っている人がいない今の状況はとても怖い。 事実、さっきから周りの空気が2〜3℃下がっているようだった。 ふと、見上げると、『剣道場』とかかれた看板がついたドアの前にいた。 「ここ、かなぁ」 高校生向けに作られているドアは、まだまだ幼い莉沙には到底重たい。 それでもなんとかゆっくりとドアを開けた。 「・・・・うわぁ」 そこは、今まで莉沙が見てきたどんな部屋よりも広く、しいんと静まり返っていた。 「おねえちゃん、どこだろう・・・」 可愛らしい手提げ袋(弁当入り)をてに、入って見回していた。そのとき。 「誰!?」 ビックリして振り向くと、其処には、水色の髪が印象的な、丁度風位の少女がいた。 しかし。びっくりを通り越し、怖かったのだろう、とうとう莉沙は泣き出した。 「う・・・・・うわぁぁん!!!」 「えっ?えええ?これ、なに〜っ!?」 泣きまくる莉沙。訳が分からないでポカンとしている少女。 辺りは莉沙の繰り出したふぶきで真っ白だ。 とりあえず、少女は莉沙に近づき、抱き上げた。 「ご、ごめんね・・・?」 ぐすぐすとぐずる莉沙をあやして落ち着かせ、少女は、一つため息をついた。 「どうしたの?誰かを探してるのかなぁ?」 「風、おねえちゃん・・・」 その名前を聞いた少女は、 「火室先輩?うーん・・・部長ならクラス知ってるかも・・・」 少女は、バッグを持った莉沙を抱っこしたまま、其処から出た。 剣道場は、未だに凍りついたままだ。 それから数分後。少女は、3−Dと書かれた教室前にいた。 「雷部長〜」 「ん?あぁ、ミズキどうし・・って、莉沙!どうして此処に?」 ビックリしている太陽に抱っこされつつ、お菓子をもらってニコニコ顔の莉沙。 「なんだか、火室先輩にお弁当持ってきたみたいです」 「え?風に?・・帝兄はどうしたの?」 「パパね、どっかいったの」 「〜っ・・」 呆れている太陽に、ミズキは。 「部長、この子剣道場にいましたよ。  来るのが解っていたとか、そういう気配がしたら迎えに行くべきじゃないんですか?」 グサリ。 「それとも・・・・・、めんどくさかったんですか」 グサグサッ。 「ミズキ・・・。毒舌、止めてくんね?」 「毒舌じゃありませんよ。正論を言ったまでです」 ミズキの背後から、黒いオーラと一緒に、オーロラビームの気配もした。 「わ、わかったから。じゃあ、俺連れて行っとくから」 一礼をして、去ろうとしたミズキを、莉沙が引き止めた。 「なぁに?」 「ありがとう」 それを聞いたミズキは、にこりと微笑んで、去って行った。

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  今回の被害者:太陽と剣道場(全面凍結)