Story 2 〜定期考査後の悪夢〜
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・で?今度は何位なの?」
しぃん、と静まり返った龍野家リビング。
大き目の、いつもなら帝が陣取っているソファに、でんっ、と今は風が座っていた。
普段かけていて何も感じない眼鏡でさえも、なぜか逆光に光り、怖く感じる。
近くに座っている帝でさえも怖く感じるのだ。真ん前に座らされている太陽が怖く感じないわけが無い。
その証拠に、太陽の顔には普段掻かない冷たい汗がダラダラと流れている。
「何位なの!?」
どんっ、とくぐもった音が聞こえる。
「・・・・・13・・・8位」
蚊の鳴くような声、とはこの事なのだろう。それほど、太陽の声は頼りなかった。
「はぁ?138位?後ろから数えたほうが早いじゃない」
何も、この光景は今に始まったことではない。
風と太陽が帝と一緒に暮らすようになってから、つまり二人が高校生になってから始まったのだ。
元々、今現在通っている高校には、風だけが行く予定だった。
だが、剣道の強豪校の其処に太陽が如何しても行きたいと言い始めた。
結局、風は実力で、太陽は剣道の特待生として無事合格、現在に至るのだが・・・・。
『あんた、テストの点、相当悪かったんだって?』
『だって、難しかったんだぜ?』
1年の実力テストで散々な点数を取った太陽。是を龍野家のオカン的存在である風が見逃す訳が無い。
『ふーん。じゃぁ、個人表、見せてよ』
恐る恐る出したが最後。その後真っ黒焦げになるまで炎の渦で焼かれて、結局帝が止めに入った。
それからと言う物、終わった後には必ずこれがある、という訳である。
「確かに、今回のテストはどれも平均が低かった、って先生たちは仰ってたけど・・・」
あきれ果て、帝に個人票が回ってきた。
「あ〜?・・・・・・・こりゃ、ヤバイな」
「でしょう?」
高校には行っていないが、それなりに知識のある帝でさえも呆れる程。
どれだけ悪いのかは推して知るべし、と言う所だ。
「お前、留年の危機だぞ」
「帝兄に言われなくっても、解ってるよ」
これから、もっと剣道の強い大学に行くことも視野に一応入れている太陽としては、耳に痛い話である。
「それなら、別に俺は何も言わないけどな・・・・」
一つ、ため息をついた。
「いいか。これだけは言わせてもらう。世の中の連中は俺みたいな奴を徹底的に排除しようとする。
そうなりたくなかったら、努力しろ」
そう言って、帝は立ち去った。
どうしようもなく困っていたが、莉沙は、すぐに帝の後を追って行った。
「あたしも、兄さんの意見に賛成よ。確かに、あんたの実力なら推薦だけでいけると思う。
けど、この世界に住んでるのはポケモンだけじゃなくて、人間もいるのよ。
人間に馬鹿にされないように、頑張らなきゃ・・・」
「解ってるよ・・・」
なんともいえない空気が漂う。
そのとき、玄関からチャイムが鳴った。
「こんにちわー。デリバード宅急便でーす」
「はーい!」
風は、弾かれたように其処から動いた。
太陽は、テーブルに置かれた個人票を手に取り、眺めて、大きくため息をついた。
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書いてる自分が痛かった・・・・。
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