Story 3 〜雷一族総本家〜

駅から飛び立って数分後。 太陽は、イワヤマトンネルがあるほうではなく、古びた登山道入口の前にいた。 「で・・・」 「如何しました?若」 平然としているピジョットをよそに、太陽は青ざめている。 「また、登るって訳・・・?」 そう、太陽の実家である雷一族総本家の土地に入っているのはそうなのだが、 いかんせん母屋は山の上。登るのがしんどいのである。 毎回ではあるものの、太陽はこれが苦手だ。 「いえ。今回は飛んできても良いと、宗家からの御達しです」 また登る訳でもないのに、何でココに・・・。 そうは思いつつも、登るよりも飛ぶ方がまし、と、飛び上がる姿勢をとった。 数分後。 太陽とピジョットは、神社のような母屋の前にいた。 其処は、秋祭り独特の賑やかさがある。 カントー地方に住む鳥ポケモンの実に約33%は雷一族の関係者だ。 残りの約66%は、風の実家である火室一族と、双子島に本家を構える氷道一族が折半している。 しかし、3年ほど前から、氷道一族から秋祭りの時に入る連絡がない。 その理由は、全く彼にはわからなかった。 「お帰りなさいませ、若!」 まだ若いエアームドの少年が挨拶してきた。 「天子姉は?」 「準宗家様ですか・・?確か、中にいらっしゃると思いますが」 「ありがとっ」 太陽は軽く挨拶すると、家の中へと入った。 外は祭りの準備で賑やかだというのに、家の中はうって変わってとても静かだ。 それは、姉が主な原因なのだろう、と、太陽はそ〜っと玄関から上がった。 太陽には、6歳上の姉が居る。 姉の名前は雷天子。雷一族の次期当主だ。 とはいっても、今日の夜更けにある当主交代の儀式でそうなるのだから、後少しである。 儀式の準備の為に、家の中はこうまで静まり返っている、というわけだ。 「おかえりっ」 「うわわわわっ!!!」 いきなり後ろから声をかけられて、太陽は心臓が止まるほど驚いた。 後ろにいたのは、太陽と似たような服装で、同じ金髪を一括りに纏めている女だった。 「っあー、ビックリした・・・。天子姉っ!驚かすなよっ!」 ビックリしている太陽の前で、天子は腹を抱えて爆笑していた。 「だって、あんた驚きすぎなのよ・・・、ひー、くるっしー・・・」 涙をふき取り、爆笑を何とか抑えて、天子は元に戻った。 「ふぅ・・・。落ち着いた・・・」 「ほんとに、天子姉準宗家なの?」 「あら。・・・ま、それも今日の夜更けまでだけどね」 にかっ、と笑った姿は本当に自分そっくりだ。 「あんたも、手伝いで戻ってきたんでしょ」 「まぁね」 「じゃあ、台所の手伝いして来なさいっ」 目をぱちくりさせている太陽を尻目に、天子は、太陽の背中を思いっきり、突き飛ばした。 よろけて走る弟の姿を、天子は笑いをこらえつつ見ていた。

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  ”てんこ”です。”てんし”じゃありません。