Story 4 〜当主交代の儀〜

その夜更け。 雷宗家のあるイワヤマの頂上に、一族に属する者達が集まっていた。 殆どはサンダーだが、ちらほらと異なる種族も居た。 「これより、当主交代の儀を始める」 良く通る声が響く。太陽を迎えに来た、ピジョットの声だ。 この当主交代の儀では、今の当主と、次の当主・・つまり、『準宗家』が対決する。 古くは何百年も前に遡り、元は準宗家が勝つまで続けられた。 要するに、強い物が一族を纏めるという理論だ。 「宗家、準宗家、前へ」 太陽は、その戦いを一番近くで見られる席に居た。 後ろには黄色の桜と雷の文様が入った帳がある。 「父さん、天子姉なんだかイラついてね・・・?」 「それを言うな。父さんも怖い」 女同士の戦いは、古来より怖い物の一つに数えられている、といっても過言ではない。 男同士なら怖くない、と言うのには語弊が有るかもしれないが、そうも行かない。 実際、ギリシア神話にもそういう話が出ているのだ。 太陽は、恐れと期待と興奮が入り混じった、不思議な気持ちで居た。 隣に居る父親は、どうだかわからないが。 「では、はじめよ」 空が光った。 天子の戦い方は至ってシンプル。力で押すタイプだ。 だが、それだけでない事を太陽は知っている。 姉は知能派でもある。小さな頃、悪戯をするにも知能犯的なことをやってのけた。 その結果、自分だけが散々に怒られる羽目にもなっていた。 雷が轟き、火花が舞う。 その動きは時を経るに連れ、ますます速くなって行く。 「太陽」 「ん?」 父親が呼んだ。 「天子は、お前が帰ってくる事にあまりいい顔はしなかった」 「なんで」 「何か、良くないことを感じたらしい。お前を巻き込みたくないようだ」 「良くない、こと?」 「そうだ。あの子は敏感だ。人一倍、な。気になるなら、訊いて見たらいい」 より一層、稲妻が光った。 勝負はついたようだ。

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  お姉ちゃんvsお母さん。