Story 5 〜姉と弟〜
「入って」
交代の儀の翌日。
夜も明け切らぬか否かの時間に、母屋の一番奥、当主の間に誰か来ていた。
「あら・・・!太陽、あんたずいぶん早く起きてきたわね」
太陽だった。
「うん、ちょっと。天子姉に訊きたい事があって、さ」
「訊きたいこと、って・・・・。何?」
まだ結んでいない天子の髪は、相変わらず剛毛で、すとんと落ちている。
「天子姉さ、オレが帰って来るのにいい顔しなかった、って、ホント?
「誰から聞いたの」
「父さん」
「そう・・・・」
少し、天子は黙ってしまった。
確かに、弟が帰ってくることについてあまり自分は賛成しなかった。
だがそれは、確実に弟の為で、嫌いだからという訳なんかではない。
「・・・・そうよ。アタシは、むしろあんたが帰ってこなければいいと思ってた」
「なんで!?」
「落ち着きなさい。ココ最近、何か変だって思わない?」
「変・・って、何が?」
太陽は考えてみた。
別に、自分の成績が赤丸急上昇したとか、帝の言葉遣いが優しくなったとか、
考え付く限りの”変な事”は無かった。いや、有ったら怖いのだが。
「春先でまだ寒い筈なのに、春本番みたいな天気だったり、今年の夏、以上に暑かったよね」
「・・・・・・・あ!」
「それだけじゃない。本来なら冬にやってくる渡り鳥が、何年か来ないでしょ」
頷いた。
「アタシも気になって、調べてみたの。そしたら、ジョウト各地で吸血騒ぎが起こってるって。
ビックリしたわ」
「吸血騒ぎ・・?」
「ええ。それも珍種の種族の子ばっかり狙った!あんたも、狙われる可能性、あるんだから」
「だからって、オレが帰ってくる・・・・・!」
「そう。帰ってくる途中に、狙われないって事は考えにくいでしょ。
それに、最近御影の様子がどうもおかしいのよ」
「御影って、帝兄の弟だろ?」
「そうなんだけど、仲悪いし、何かたくらんでるのかも・・・兎に角、そういうことよ」
天子からそう言われ、部屋から太陽は追い出されてしまった。
丁度、朝ごはんの時間まで近い。
「・・・・・・・・・・・御影、あんた、一体何を考えているの・・・・!?」
Back
前振りにもなんねぇ・・・・_| ̄|○
|